Archive for the ‘読書’ Category

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ベーシックインカム

なんか、ベーシックインカムが財政的には実現可能と書かれた本があるという記事を読んだので、ちょっと読んでみた。

ベーシック・インカム : 年間生活費100万円! 36歳からのドケチリタイア日記

ベーシック・インカム 国家は貧困問題を解決できるか

とりあえず気になった記述をまとめてみる。もっと詳しい説明や根拠について興味のある方は、本のほうで確認して下さい。なお、「BI」「べーシック・インカム」の略です。

ベーシック・インカム – 国家は貧困問題を解決できるか (中公新書)

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第1章 所得分配と貧困の現実

本書のBIの提案は、生活保護に支出されているレベルを下げて、それをすべての人にアクセスできるようにしようということである。

P45

まずは日本の福祉についての現状分析。日本では、企業に社会保障の一端を担わせてるが、本来は国の仕事ではないかと指摘。もっとも、これは正規雇用のみの話。現在では非正規雇用が増えているので、その恩恵を受けられず貧困に陥る可能性が高い。

そういう人の為に生活保護があるが、日本の生活保護は受給水準は高いが受給率は低い。おそらく、このほうが広く浅く支給するよりも費用が抑えられるからと推測。事実、他の先進国と比べて、GDPに占める生活保護の支出割合は低い。

また、現在実施されてる雇用の創出などについても、中間で中抜されて一部の既得権益層が得するだけで無駄が多い。だったら、全員に公平に現金をばら撒いた方が効率がいいし平等である。それを実現するにはBIが一番手っ取り早い

第2章 ベーシック・インカムの思想と対立軸

不正受給の多くが、収入があるのに申告してないケースだというのは、現行の生活保護制度の欠陥を示している。働けば生活保護費を減らされてしまうのでは、誰も働こうとしなくなる。あるいは、申告しようとしなくなる。BIが導入されれば、働いて収入を得ることは賞賛されることになる。

P108

この章は、BIの歴史とか所得再分配についての記述だが、興味ないので大幅に省略。

BIには世代間格差がないので、現状の著しく若者に不利な高齢者勝ち逃げ年金制度よりも優れている。今後、歴史的な超少子高齢化社会を迎える日本には、有効な政策である。

また、生活保護の不正受給者の多くは、収入があるのに申告しない点について触れている。具体例として、もうすぐ政界引退する橋下徹市長の「不正受給調査専任チーム」による対策をあげているが。

大阪市の生活保護不正受給“容疑者”は、専任チームに1ヶ月間監視されている – ニュース – ニュース|週プレNEWS[週刊プレイボーイのニュースサイト]

「ケースワーカーは生活保護者を100人くらい担当しているなんてザラですから、時間的余裕がない。そこでケースワーカーに代わってわれわれが調査する。家から出るところに警察OBが張り、僕は店のほうにいる。家を出ると警察OBから僕に電話が入る。自転車でスナックに出勤してくる。店に入り開店準備をしていることを確認する。調査は最低でも1ヵ月続けます」

その為の人件費は無駄と切り捨ててる。ちなみにこの制度、今でもやってるみたいだな。

大阪市 政策企画室 【報道発表資料】生活保護の適正実施に取り組みます

全区に配置している、警察官OBを含む「不正受給調査専任チーム」により、不正受給が疑われる事案に対して重点的調査を実施し、引き続き不正受給の徹底排除に向けた取組を推進します。

【平成27年度予算額 2億800万円】

2億800万も使うのかよと思ったが、大阪市の生活保護の予算(H23年だが)の0.1%にも満たないのか。これなら気合入れて調査すれば元取れるかも。

大阪市市政 生活保護行政に関するよくある質問

大阪市における生活保護費の平成23年度予算は2,916億円となっています。

で、実際の成果はどうかと思ったて調べたら、個別の案件についての詳細まで公表してた。生活保護Gメンといい、FAQの細かさと丁寧な回答といい、大阪市の生活保護への力の入れ方は半端ないな。

大阪市市政 不正受給対策

これを見ると一定の効果はあげているようだが。ざっと見たところ、返還された費用だけでは、元は取れてなさそう。まあ、不正受給者や予備軍への威嚇効果はあるだろうし。受給を打ち切られれば将来の支出も減るだろうし、数字だけでは判断できないかな。

もっとも前述したとおり、ベーシックインカムを導入すればこんなことする必要なくなるんだけどね。

今回はここまで

最後まで通して読んだんだけど。3章の「ベーシック・インカムは実現できるか」については、簡単に書けそうにないので、また次の機会にします。

続きを書きました
「ベーシック・インカム 国家は貧困問題を解決できるか」を読んだよ補足 -第3章-

とりあえず、本書の言いたいことを大雑把にまとめるとこんな感じ。

一部の人にワープアより贅沢な暮らしができる生活保護費を支給するよりは、国民全員に文化的な最低限度の生活を送れる程度の金をばらまいた方が効率がいい。現行では、企業に社会福祉の一部を重荷に感じるほど負担させてるが、それは本来国が行うべきことで、財政的には今の日本でも実現可能(詳細は第3章で説明)。金を配ったからって、すべての貧困問題は解決できるわけではないが、現状の生活保護だって効果をあげてない。少なくともベーシックインカムなら、現在の社会保障政策でやってることより、貧困から救える人は多くなるのに手間暇金はかからない

個人的には、本書のベーシックインカムの内容については、ほぼ全面的に同意するので、財政的に実現可能なら実現に向けて進めてもらいたいと思っているが。実際にベーシックインカムが導入されると困る既得権益層の抵抗は、相当激しくなりそうだな。

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インターネット・ゲーム依存症 ネトゲからスマホまで

最近ゲームのプレイ時間が長くなってる私にちょうどぴったりな、「インターネット・ゲーム依存症 ネトゲからスマホまで」という新書があったんで読んでみた。

インターネット・ゲーム依存症 ネトゲからスマホまで (文春新書)

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とりあえず各章の概要と、感想を書いてみる。

プロローグ やはり脳が壊されていた!

まずは前置き。最初に中国での研究による、インターネット・ゲーム依存の若者の脳が麻薬中毒患者と同じような状態になってたことを言及している。そんな「デジタル・ヘロイン」がスマフォやネットの普及によって、いつでも誰でも安価に手に入る現状についての説明。

第1章 身近に溢れるインターネット・ゲーム依存症

インターネット・ゲーム依存症の生活や行動の具体例を紹介。また、脳に与える影響についての説明。

こういったゲームへの依存の悪影響が最初に報告されたのは1982年だが、その後の研究が進まず。ようやく30年過ぎてから「インターネット障害」として、アメリカの精神医学会の診断基準に採用されたことの紹介と、インターネット障害の内容。

第2章 デジタル・ヘロインの奴隷となって

インターネット・ゲーム依存症の特長について。

第3章 二次性発達障害とデジタル認知症

若い時にインターネット・ゲーム依存症になると、その後の負け犬人生確定しかねない危険性についての解説。

第4章 はまるにはワケがある―依存する側の理由

ゲームにはまりやすい人の特徴。

第5章 蟻地獄の構造―万人がはまる合成麻薬

依存症になりやすいゲームについての解説。

第6章 ネット、ゲーム依存症を予防する

韓国と中国のゲーム依存症対策と、日本の対応の遅れについて。また、予防の為の自己防衛方法の紹介。

第7章 ネット、ゲーム依存症を克服する

インターネット・ゲーム依存症になってしまった後の対応について。ここまで書いてなんだけど、だいたい章のタイトルそのままだな。

今回の感想

全体的には、具体的な患者の例を挙げてインターネット・ゲーム依存症を紹介して。状況を分析検証して、対策について考えるみたいな内容かな。

ただ、プロローグの研究って、インターネット依存の若者の対象者は18名しかいないんだよね。それなので、この研究結果ですべてを判断するにはサンプルが足りない気がする。ぶっちゃけ、脳機能が低下するまでゲームに依存してる、極端な例だけ集めただけじゃね。

たとえゲームにはまっていても、多数の人は普通に日常生活を送ってると思うんだけど。まあ、本書ではゲームを含んだインターネット依存者は400~500万人とも言われてるらしいが。この400万人以上のほとんどが、脳機能に深刻な影響があるんだったら、著者の警告どおりインターネット・ゲーム依存症は覚せい剤並のやばさで、国も本腰を入れて対応しないといけないだろうが。

実際はこの400万人って人数は、インターネット・ゲーム依存症じゃなくて、予備軍程度じゃない。そういった人は、日常生活よりゲームを優先させるかもしれないが。日常生活に支障をきたすぐらいはまってる人や、脳機能に影響が出てる人が多数派とは思えないが。

私のケース

とはいえ、この本に出てきたゲーム依存症の行動や、ゲームにはまった人の特徴とかは、自分にも思い当たる節がかなりあるんだよな。

私も最盛期は、家に帰ったらとりあえずゲーム。風呂に入ったら寝るまでゲーム。下手すると4時ぐらいまでやって、6時起きで会社に行ってたからな。流石にそこまでやると、電車の中では立ったまま寝て。仕事は頭ボーっとしながら省電力モードでこなして。昼休みは飯食いながら会社のパソコン(後に業務に関係ないサイトはアクセスが禁止されました)で攻略サイトをチェックして。午後の仕事が終わる頃になってようやく目が覚めて。家帰ってまたゲームって感じだったな。

しかも、そういった事を悔いているのに、今でもまだソシャゲに時間を取られてたりするからな。本でも、依存症が一定以上進むと一生後遺症が残るとか。一度やめても、またゲームをプレイすると再燃することがあるとか書いてあったが、まさにその通りかも。もしかして、脳検査受けたら脳機能低下してるかもしれん。

それを考えるとやはり、ゲームはやらないか、やってもほどほどにしといた方がいいな。それにしても、「ゲームは1日1時間」という高橋名人の言葉には先見の明があったな。

個人的なゲームについての考え方は↓
働きたくないけど働かなきゃいけない新社会人へ -若い頃にお金と時間を浪費すると、年取ってから後悔する事になるぞ-

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税金を払わない巨大企業

富岡幸雄著の「税金を払わない巨大企業」を読んだんだけど。筆者は、国税庁で税金を徴収する側にいた後、税金を取られる側の企業の顧問にもなったらしい。そんな税金のスペシャリストが主張する、消費税を増税するより先に利益に応じた税金を払ってない巨大企業から税金を取れ、ということが書いてある。

以下に各章ごとの簡単な内容と、章によっては読んだ感想とかを書いてみる。

第1章 大企業は国に税金を払っていない

日本の法人税の税率は高いように見えるが、大企業が払っている税金は税率よりも低いという指摘。企業の税引前の利益と法人税から割り出した実際の税率を「実行税負担率」として、これが低い大企業35社の例をあげて説明してる。

例えば、「とくにソフトバンクは、2013年3月期の税引前利益が788億8500万円もありながら、法人納付税額がわずかにで500万」とか。ただ、この本読む前にAmazonのレビュー読んだんだけど、本書が例に出してる数字って、グループ企業全部合わせた連結決算じゃなく、持ち株会社の単独決算が半分以上なんだよね。具体的には、税金払ってないベスト10のうち9社は単独決算で、全35社でも18社。

トンデモ本大賞候補ですか, 2014/10/4

ソフトバンクならIRページの決算短信に連結決算が公表されてるので確認したけど。

決算短信(PDF形式:1.26MB/106ページ)

上記PDFファイルによると、税引き前利益が9323367百万円。当期利益が586149百万円。当期利益は税引き後の当期純利益だとすれば、346218百万円の税金を払ってるから、ソフトバンクグループ全体での実行税負担率は約37%

ちなみにユニクロのファーストリテイリングだと2014年8月期の期末決算によると、税引前利益が135470百万円。当期利益が79337百万円。税金は56133百万円なら税率約41.4%。決算の数字だけ見るなら、ファーストリテイリンググループ全体では、実効税率もほぼ法人税ぐらい払ってる。

期末決算

もっとも会長の柳井氏個人は、オランダの資産管理会社に株を譲渡するなど、数億円規模の節税になるような行為をしてるらしいが。

531万株を海外へ売却 ユニクロ柳井社長の「狙い」

それは置いとくとして、本書の例に出された35社ぐらいの大企業なら、持株会社の単独決算だけで判断する意味はないな。

とはいえ、本書のリスト上位35社には、連結決算でランクインしてる下記17社もある。これらの企業については、「税金を払わない巨大企業」と言ってもいいかもね。

オリックス
ANAホールディングス
住友商事
三菱重工業
富士重工業
丸紅
ニコン
日産自動車
サントリーホールディングス
阪急阪神ホールディングス
伊藤忠商事
本田技研工業
キャノン
トヨタ自動車
スズキ
日立製作所
ソニー

また、トヨタは十分な利益があるのに税金を払ってなかった時期すらある。

大企業優遇税制 恩恵たっぷり トヨタ法人税ゼロ円 08~12年度 株主配当は1兆円超■内部留保も積み増し

ちなみに、税金は払っていなかったけど、自民党には献金し続けてたりもする。

法人税払わぬトヨタ 自民には巨額献金継続

第2章 企業エゴむき出しの経済界リーダーたち

ここは精神論。筆者の主張を一言で言うと、大富豪の経営者は私腹を肥やすだけじゃなく、企業の責任を果たせ。

第3章 大企業はどのように法人税を少なくしているか

具体的な節税方法の説明。内容については本書参照。

第4章 日本を棄て世界で大儲けしている巨大企業

第5章 激化する世界税金戦争

この2章は、最近の先進国共通の問題である、世界的な租税回避の流れについて。

第6章 富裕層を優遇する巨大ループホール

金持ちが金持ちたる不労所得が、労働所得に比べて優遇されてる点について。

第7章 消費増税は不況を招く

大雑把に意訳すると、消費増税は大企業や富裕層にはどうってことないが、中小企業やそれ以外の個人には影響が大きいから好ましくない。

第8章 崩壊した法人税制を建て直せ!

現行の税制への苦言と将来の見通し。

今回の感想

本書では、日本の法人税の税率が高いと主張してる割に、ユニクロの柳井会長が世界的な大富豪になれたのは、持ち株会社の実効税率の低さを持ち出して、税率が低かったからだと言ってるが。実際は、巨大企業ファーストリテイリングはグループ企業の頂点に君臨する持ち株会社が子会社・関連企業の利益を吸い上げて、一部の人間の為に富を集中させたのが理由ではないかな。ソフトバンクも同様。

つまり、限られた富裕層だけが富を独占してトリクルダウンが発生しないのは、現行の税制度の不備が原因だからなんとかしろ。それが本書の主張だと思えた。この状態で、仮に法人税を上げたとしても。税金の優遇措置を享受できる業種や、制度の不備を見つけ抜け道を探せる優秀なドリームチームを抱えた大企業なら、痛くも痒くもないだろう。しかも、現実には法人税を下げると言ってるんだからな。

Amazonのレビューでは、巨大企業の子会社・関連会社を除いた単独決算の数字を例にあげてることについて、ぼろくそに書かれてるのが目立つが。確かに、連結決算で評価しないと意味はないと思うけど。その点だけを責め立てるあまり、全体的な内容を評価してない批評が目立ってる。パッと見で客観的に判断してると思えたのは、下記レビューぐらいかな。

大企業が悪いわけではないが, 2014/9/26

少なくとも、実名だしてる17社については、連結決算でも実際に払った税金は法人税率より低くなってるし。本書で書かれている税金逃れの手法が、日本の税制の不備に原因があり、その対策が必要だという意見は間違っていない。トータルで判断するなら良書だと思う。

それなので、「税金を払わない巨大企業」というタイトルはいいとしても、帯でユニクロ・ソフトバンクを全面に出してるのは間違いだな。これは筆者の責任ではなく、おそらく出版社の宣伝担当者の問題じゃね。もし、ユニクロ・ソフトバンクがメインなら、内容とそぐわなくなるがタイトルは「税金を払わない富裕層」とかの方がしっくりくるかな。

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So What?

こないだセールで買った、Kindle版のわかつきめぐみ「So What?」なんだけど。

わかつきめぐみのSo What?電子書籍版がKindleで3巻まで108円 -全4巻買っても856円-

紙の単行本1巻を引っ張り出して比較してみたら、結構変更されてる点があった。悪い方に。これは電子書籍化の問題と言うよりは、文庫本にした時の編集の問題だと思う。以下に、紙の単行本との比較を上げてみる。

扉絵

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電子書籍版の目次はこのようになっていて、単行本とはちょっと違う。だが、もっと大きい違いは扉絵の扱い。電書だと各話のタイトルも、向かって左のようにテキストのみで処理されているが。単行本だとすぐ1ページ目になっていて、次は見開きの扉絵にタイトルが入ってる。

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一方、電書では単行本に合った文字の写植がない状態で収録されている。当然、単行本の方が連載時の状態に近いんだと思うが。電書の方が絵だけが見れるから、かえっていいって人もいるかも。

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おそらく、電書の元になった文庫版は通常の単行本より小さくなるので。絵の上に文字が載ってると、ごちゃごちゃして見づらいって理由だと思うが。こっちはそれほど重要な変更点ではないんだが、次のは致命的。

おまけコーナー

単行本のページでは、おそらく広告か何かで余った余白の穴埋めだと思うが。作者のおまけコーナーみたいなのがあるんだけど。これがばっさりカットされてる。

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これも電子書籍だからでなく、おそらく紙の文庫本がそうなので合わせてるんだと思うが。やっぱり字が小さくて読みにくくなるって理由なんだろうか。

ちなみに、単行本の第1巻では「ウラ話うちわネタ 5」まである。

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それと単行本では、本編のSo What?以外の読みきり作品も収録されているが、電書ではそれもない。これは特に問題ないかな。

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今回のまとめ

So What?の電子書籍版はちょっと残念なことになってるかな。まあ、上記の写真で分かるとおり、単行本には紙の劣化があるので、今回電書で買った事を後悔することはないんだけど。4巻完結で1~3巻が108円だったからな。でも、通常価格だと、正直お勧めできないかな。

So What? 1 白泉社文庫

ただ、今回は文庫本が元になってるからかもしれないが。それでも、オリジナルの紙版と比べると、電書版は劣化コピーになっているんだよな。電子化の再現度がこの程度だと、手持ちのマンガを処分して電子書籍に移行する事は出来ないな。紙本を処分する覚悟があるのなら、中途半端な電子書籍を買うよりも、自分で自炊した方がよっぽどいいかな。

そんな訳で、So What?に限らないけど、電子書籍はページの端々まで思い入れのある作品なら、スクエニとかキルタイムみたいに電子書籍でも紙に近いようにしてる出版社以外は買わない方がいいかも。そこまでこだわりはないけど、たまになんとなく読みたくなるような作品なら、安売りしてる時に電子書籍で買ってもいいかな。

セール時でもよほど割引率が高くなければ、全巻そろえるとなるとブックオフの100円コーナーよりは高いんだけど。日本の住宅事情を考えるなら、かさばる紙の本の保管コストまで考慮すれば、その値段差を無視できる水準まで値段が下がるなら買っても良くね。広い持ち家があって収納に困らないなら別だけど、それでも紙の劣化リスクは避けられないし。

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金持ちは税率70%でもいいVSみんな10%課税がいい

「金持ちは税率70%でもいいVSみんな10%課税がいい: 1時間でわかる格差社会の増税論」という本を読んだんだけど。内容は、金持ち税率70%派ポール・クルーグマンジョージ・パパンドレウみんな10%課税派ニュート・ギングリッチアーサー・ラッファーのディベートの様子。パパンドレウを除いた3人へのインタビューが収録されている。

金持ちは税率70%でもいいVSみんな10%課税がいい: 1時間でわかる格差社会の増税論

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肝心のディベート部分は、双方の意見について深い検証がなされる訳でもなく。お互いが言いたい事を言ってるだけで、なんか討論と言うよりは弁論大会って感じに思えたよ。

以下、読んでみて気になった点をピックアップして感想を書いてみる。

金持ち70%とみんな10%どっちがいい?

まず、金持ち税率70%とみんな10%課税については、どちらかを選ぶとしたらみんな10%かな。金持ち増税派では、金持ちの所得税を上げて税収を最大化する税率は、研究では最低70%という結果が出たらしいが。個人的には上げ過ぎだと思うし。

クルーグマンの意見は、学者先生ならではの机上論に思える。具体性にかけるんだよね。実際、フランスの所得税を75%に上げる提案については、欧州全体で税率の足並み揃えるでもしないと、簡単にルクセンブルクに移住できるから無理だろうと言ってるし。アメリカなら可能とは言ってるが。単独インタビューで、最高税率を適用する所得層について聞かれた時に、「なぜならそこまで税率を上げるのは、政治的に無理だとわかっているからです」とも言ってる。

個人的にクルーグマンの考えは、金持ちは税率70%って自分の理論は正しいから、それが実現できない社会は間違ってるからなんとかしろって事だと読めた。なんせアメリカは、サンディスプリングス市のように、富裕層が貧乏人お断りの自治体を作れちゃうんだから。クルーグマン先生も当然、この事は知ってるだろうし。

サンディスプリングスについては↓
「“独立”する富裕層 ~アメリカ 深まる社会の分断~」を見た感想

みんな10%だけなら反対

とはいっても、現行の所得税を一律10%にするだけなら反対なんだけど。ラッファーの主張するように税制を改革して、日本風に言うなら消費税以外の税金は全部総合課税にまとめて、一切の控除や宗教団体などの非課税特例も撤廃するというなら、一律課税の方が金持ち重課税よりはいいと思う。

ただ、控除とか例外規定を完全に廃止するのには反対かな。ラッファーはそうすれば税の申告する必要もなくなると言ってるけど。日本なら、給与所得や株とかの特定口座なら会社から調書が行くからいいとしても。不動産所得・一時所得・雑所得・事業所得とかも、確定申告なしで税務署が把握できるのか。米国には社会保障番号制度があるけど、日本と違ってサラリーマンでも確定申告しなくちゃならないんだから、事務手続きは相当煩雑だと思うが。控除とかをなくすだけで、本当に税金の申告をしなくて済むんだろうか。

日本の場合、将来的にマイナンバー制度が個人のすべて金融口座情報と紐付けされて、資産状況と金の流れが完全に政府に丸見えになるならともかく。現実的には、どうせ確定申告は必要になるだろう。それでも、控除とかがなくなれば確定申告するにしても、税務署の手間は省けるし、申告書も書けないような奴のために無駄な税金を使って申告会場の説明バイトを雇う必要もなくなるか。それを考えると、控除も一律基礎控除にまとめて、103万円ぐらいにすればいいかもしれん。

もっとも、今の日本だと住民税だけでも10%もあるから、税率について具体的な数字を算出すると、また考えが変わるかもしれん。ちなみに10%はギングリッチが例で挙げた数字。ラッファーは、92年の大統領選の時に計算した12%を出してる。

それと、増税云々言う前に税金を効率的に使えという主張はごもっとも。まずは、無駄な支出をなくしてからだよな。けど、医療費とテレビの価格を比べるのは比較対象を間違ってると思った。

金持ち増税すると国外に逃げる?

仮に、金持ちに増税したらどうなるかの研究結果について、クルーグマンは「確かに上位1%の人々の行動には多少の影響が表れます。一部には税金逃れをする人も出るでしょう」と言ってるが。上位1%の富裕層なら、一部でも影響大きいんじゃね。その中に ビリオネアが含まれてたら、間違いなく経済への打撃になると思うんだけど。

プエルトリコ

前にテレビで見た「新富裕層_ vs.国家~富をめぐる攻防~」って番組では、金持ちがアメリカからプエルトリコに移住してたが。プエルトリコの行政サービスや、医療・福祉・教育とか治安や経済レベルがどれほどかは分からないけど。アメリカから引っ越して満足できる程なのかどうか、ちょっと気になった。それを差し引いても、手元に残る金を考えると、プエルトリコ移住にメリットがあると判断したんだろうな。

“新富裕層” vs.国家 ~富をめぐる攻防~
ポールソン氏に続け、ヘッジファンドはプエルトリコへ-米脱出

シンガポール

仮に日本で所得税の税率をそこまで上げたら、一部の金持ちがシンガポールとかに移住するだろうな。その中には間違いなく、ユニクロの柳井会長エイベックスの松浦社長も含まれるだろう。

富裕層の税金は高いか エイベックス・松浦社長の主張 検証すると…
エイベックス・松浦社長の税制不信 「この国は富裕層に良いことは何もない」

もうすでに、移住してる人もいるみたいだし。日本でマイナンバーが導入されるのは、資産税の前触れとか考える人も、当然検討してるだろう。他にも、シンガポールなら相続税もないし。起業も日本より有利らしいし。

Nスペ”新富裕層” vs.国家 ~富をめぐる攻防~に出場しました。
富裕層「シンガポール」に熱い視線 相続税・贈与税ゼロ、治安もいい

金持ちの税率は貧乏人より低い事実

本書ではラッファーが、富裕層の方が貧困層よりも課税される税率が低い事を、バフェットを例に出して述べているが。日本でも同様に、実際の所得と課税所得が著しく違っている人がいるねえ。例えば前述した柳井正氏とか。

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531万株を海外へ売却 ユニクロ柳井社長の「狙い」

他にも、証券税制改正で配当所得が総合課税になる大口株主が「発行済株式の総数等の3%以上」に変更される前に、保有割合を3%未満になるよう売却した稲盛和夫氏とか。

No.1330 配当金を受け取ったとき(配当所得)
お金持ち「節税」33億円 持ち株減らし 稲盛氏ら250人
日航未公開株250万株取得 稲盛名誉会長が創業の京セラ 上場で 約45億円の“利益”も
日航株再上場 名誉会長出身企業など“ぬれ手であわ” 京セラは45億円余
稲盛和夫氏の節税に見る日本とアメリカの大金持ちの違い 毎日新聞追加版

私が同じ立場でも、むざむざ総合課税で税金がっぽり取られるなら、保有比率3%未満にまで減らしただろうが。それは自分が、モリエールの「人間ぎらい」に出てくるアルセストみたいに、世間体を気にしない男だからであり。社会的地位の高い稲盛和夫氏なら、ノブレスオブリージュたるべきだと思うけど。

自分は正論を言ってるのに世の中に受け入れられないとお嘆きのあなたへ↓
人間ぎらい モリエール (著) 内藤 濯 (翻訳)

「どうせ税金払っても日本政府じゃろくな使い方しないから、節税してその分もっとマシな事に使うぜ」とでも言ってたなら、それはそれで評価できたが。また、日航未公開株のインサイダー批判に反論してるけど。結果的には株の保有比率下げた事で課税逃れになった人に言われると、額面どおりには受け取れないなあ。

JAL稲盛名誉会長、取締役退任会見でインサイダー批判に不快感 「これが社会なのか、世の中なのか」

今回のまとめ

そんな訳で、金持ちの課税を強化して税収を増やそうとしたって。度が過ぎると金持ちの国外脱出を促すだけだと思う。まあ、重税しても納得のいく税金の使われ方をするとか。政府に7割ピンはねされても、まだ暮らしたいと思わせる魅力的な国ならいいが。金持ち増税派が提言する、低所得者への所得再分配には、金持ちへの直接的なメリットはないからな。まあ、貧乏人が減れば治安はよくなるかもしれんが。高額所得者なら、セキュリティ対策に金かけた方が費用対効果は高いだろう。

だからといって、総合課税で一律10%とかにしても、金持ちが素直に税金を取られるとも思ってないけどね。昔から、税金対策で会社を作る話は日本でもあるし。かといって、チェックを厳しくするとそれだけコストもかかるし。

そう考えると、下手に税制を改正するより。金持ち優遇税制にして、シンガポールやスイス・モナコみたいに、世界中から金持ちを招き入れる方がいいかもしんない。