P.A.WORKSのノルマ
なんか、アニメ製作会社の新入社員ではなく新人に課するノルマが話題になってるらしいが。
会社説明会レポート 2016年 | 求人情報 – RECRUIT | 株式会社ピーエーワークス 公式サイト – P.A.WORKS Co.,Ltd. Web Site
一般企業に例えると、試用期間で使えないと判断したら首切りってことだから、そんなにおかしな話ではないように思えるが。ただ、このP.A.WORKSって会社の採用情報を確認したら、実質賃金が最低賃金以下になる可能性大なんだよな。
P.A.WORKS採用条件
求人情報 – RECRUIT | 株式会社ピーエーワークス 公式サイト – P.A.WORKS Co.,Ltd. Web Site
雇用形態が嘱託って、まともな企業だと定年後とかに再雇用する時とかに使う契約じゃね。実質的には、あのすき家がかつてアルバイトに残業代払わせない為にやってたのと同じ、業務委託みたいだけどね。
しかも、研修費は月額37500円って、間違いなく最低時給下回ってるな。まあ、「研修中も本番動画作業に伴いプラス出来高」があるから、即戦力クラスならそれなりの金額になるのかもしれんが。とはいえ、研修期間終わったら研修費なしの完全出来高制になるんだよな。中には、研修期間の方が稼げる人もいるかも。そういう人は、パソナルームやIBMリストラマニュアルみたいな手続き踏まず速攻で肩たたきか。そのための「嘱託」だよな。
福利厚生については、1年間の昼食補助や、ワンルームの寮を月15000円+共益費・光熱費で提供してるけど。ぶっちゃけ、低賃金過ぎてまともな家賃払ったら暮らせないだけじゃねえの。
加えて、保険が「傷害保険加入」だと、労災すらない業務委託契約で間違いなさそうだな。これだと、労働基準法で保護されないし、年金・健康保険は自腹だし、首になっても失業保険も出ない。おそらく、会社としては社会保険を負担したくもないからそうしてるんだろうな。
応募者にとってこの契約のメリットを一つ挙げるとすれば、社会保険に加入してないからすぐにやめたとしても、履歴書を汚すことはないってとこか。けど、売り手市場の就職戦線で不自然な空白期間を作るのは、一般企業の採用ではかなりのハンデじゃね。面接でこれを説明出来なきゃ、下手すりゃ人生積むかもね。
追い打ちQ&A
ついでに、採用Q&Aで気になった問答についてコメントしてみる。
採用時の雇用形態は?
嘱託契約となります(※正社員ではありません)。出来高制です。
動画単価は作品によって違います。
テレビシリーズの動画単価は1枚200円~230円くらいでしょう。
研修費の支給額は2ヶ月だから、その後はノルマの350枚ギリギリだと月7万円から80500円、500枚で10万から11万5千円か。噂通り、手が早くないと生き残れない世界だな。
原画になった場合の雇用形態は?
現在採用している雇用形態は、出来高+技能報酬と、社員の2通りです。原画マンの出来高はカット数です。作品やカット内容の難易度で変わります。技能報酬には、3か月毎に平均月産カット数を算出し、その数に応じて決めるものと、数以外の力量に応じて決めるものがあります。動画以上に個人差があります。
原画までランクアップすれば社員になる可能性が出て、ようやく人並みの生活が出来そうだが。逆に言うと、ここまで這い上がれなければ使い捨てで終わるってことかな。
何人くらいの応募がありますか?
2015年の応募数は100名弱でした。
これが多いのか少ないのかは分からんが、地方でつぶしの利かない業種なら上出来な気がする。だから、これだけの悪条件で募集かけれるんだな。
寮の場所、入居期間、入居人数、徒歩で通えますか?
寮の場所 → 城端駅の近くにございます。(本社からは少し遠い)
入居期間 → 部屋の数が限られており、1~2年くらいの入居期間となります。
通勤方法 → 徒歩の場合、片道30~40分かかります。また、歩道の整備もされてない場所がありますので、会社では公共バスまたは自転車での通勤を推奨しております。原付・バイクでの通勤は禁止とさせて頂いております。
寮は徒歩圏にはないのか。しかも、入居期間が限定されてる。おそらく、嘱託なら交通費も出ないから結構厳しい条件だな。やはり、2年で原画になれない奴はゴミ箱ポイポイのポイだな。
生活していけますか?
生活していけなければアニメーターはいません。
採用基準で最も重視しているのは、まず動画マンとして生活していけるだけの力量があるかです。以下は動画マンが回答したものです。
・研修期間は仕送りをしてもらった。
・生活費に必要最低限の額はとにかく枚数をこなす。
・城端は生活費がかからないので、できないことはない。
ド直球な質問だが、やはり早く一人前になれないと金銭的には厳しいよな。まあ、数こなせる人なら稼げるみたいだから、完全な実力主義社会なんだな。
原画試験を受けるのは最大3回までと制限されていますが、その理由を教えてください。
原画試験を3回受けて受からないということは、原画に向いていないということだからです。
一般企業と違って、手間暇金をかけて新入社員を育てるより、千尋の谷へ落として這い上がってこれた奴だけ育ててるみたいだな。最初の段階で正社員じゃなく嘱託だから、いらなくなったら速攻で首切りできるし。
原画試験を受ける回数制限がありますが、そこで受からなかった場合はどうなるのでしょうか?
原画マンになることはできませんが、動画マンとして技術を磨いていくことはできます。動画検査、設定デザインの資質があれば、他のセクションを勧めることもあります。
動画マンとして使えそうなら、歩合給で働き続けることも可能みたいだが。会社にとっては、社会保険とか基本給といった余計なコストなしで出来高払いすればいいんだから、コスト削減できて一石二鳥か。
鉛筆などの文具は会社支給ですか?
いいえ。購入してもらうことにしています。社内でも販売しており、市販より割安でご購入いただけます。
消耗品も自腹かよ。とはいえ、嘱託でも個人事業主として仕事を受けてることにすれば、交通費とか含めたこういう支出は経費で落とせるのかな。本気でアニメーター目指すなら、文芸美術国民健康保険組合とかに入ったほうがよさそうだな。
年金は、小規模企業共済とかの加入を検討かな。
もっとも、それぐらい稼げるなら正社員目指したほうがいいかもしれんが。
動画の雇用の条件、手当ては、業界一般に比べて恵まれているようですが?
こう言うのもなんなんですが、この規模の会社にしては頑張っています。
P.A.WORKSが必要としているのは原画マンです。誤解を招くかもしれませんが、動画は原画育成のための先行投資として考えています。動画はスピード、物量、単価の面から業界全体が海外への依存度を高めています。これを食い止めることは出来ません。日本のアニメーションの生き残る道は、多様な原画の表現の継承にしか無いと考えています。条件面で頑張っているのは、この規模の会社が、地方で作画を育成することの大きな可能性を信じているからです。
これで恵まれてるってことは、これ以下は推して知るべしだな。だからアニメの制作は、中国や韓国の外注が多いんだな。
もっとも、動画マンは原画マンを選別するための消耗品で、使えななければ間引くと言ってるみたいだが。
SHIROBAKO
ちなみに、このP.A.WORKSの代表作には「SHIROBAKO」という、アニメ制作業界を題材にした作品があるんだけど。再放送の一挙放送で見た感じでは、なんかいい話っぽかったが、現実の世界は……
今回の感想
P.A.WORKSの雇用条件は厳しいと思うが、安倍内閣が推進してる残業代ゼロ法案と同じ完全実力主義の弱肉強食社会だから、成果を出せる人にとっては良い条件かもね。もっとも、過労死法案との違いは、年収1000万以上どころか年収100万未満でも適用されてしまうとこだが。
別件だが、アニメーターの待遇に関するJAniCAの報告書を検証した記事があるんだが。
元ソース確認してないのでブログの完全受け売りだが、P.A.WORKSが募集してる初期条件のアニメーター(動画マン)と同じ職種だと、「アニメ若手制作者 平均年収は110万円余」らしいが。これは、動画マンとして生き残った人の平均で、実際はここまで稼げずやめた人とかも多数いると指摘してる。
さらに単価については、P.A.WORKKSが「業界一般に比べて恵まれている」というのがうなづける話も出てるな。
テレビシリーズの一般的な動画の1枚あたりの単価は190円前後ですが、150円程度の単価も珍しくはありません(単価100円とかも存在します)
こんな過酷な環境なのに、毎クール新アニメが大量に投入される日本てすごい。やっぱりアニメは、家で見るのが1番ですね~!!
コメントを残す