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「“独立”する富裕層 ~アメリカ 深まる社会の分断~」を見た感想

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クローズアップ現代

4/22に放送されたNHKのクローズアップ現代で、「“独立”する富裕層 ~アメリカ 深まる社会の分断~」って特集をやってたんだけど。

“独立”する富裕層  – NHK クローズアップ現代

以下、番組の現地リポート部分について要約。

“独立”する富裕層

「100万ドル(約1億円)の以上資産を持つアメリカの富裕層。その富裕層が今、自治体のあり方を変えようとしています」というナレーションで始まる番組では。富裕層は税金が貧困層の為ばかりに使われているので、金持ちが住む地区を貧乏人から切り離し、新たな自治体を作りたがっている。そういう自治体が、全米で急増してる。

富裕層の台詞

高い税金を払っているのに
それに見合う公共サービスを受けていません

その一方、富裕層がいなくなった自治体では、税収が減って公共サービスも低下している

貧困層の台詞

公立病院の予算が削減されたので
私たち家族は困っています

アメリカの地方自治

ここで日本とは違う、アメリカの地方自治制度についての説明。アメリカは、50の州があって国のような大きな権限が与えられている。その下に3000あまりの郡(日本で言う県)がある。州によって違うが、郡に住む住民は、自分たちで境界線を引いて新しい市を作る法案を提出する事が出来る。州議会の承認を得て、住民投票を行い賛成多数となれば、新しい市が誕生する。

それなので、前述したような富裕層が住む地域を貧困層から隔離した、新たな自治体が作られる。

富裕層が作った自治体

続いて、富裕層を中心に新たな自治体を作る法案を提出してる、ジョージア州の話。議会で富裕層側と貧困層側が対立してる。富裕層が法案を提出してる理由の一つは、自分たちは税金を多く払っているのに貧困層の為に使われているという不満

具体的には、警官が治安の悪い貧困層が住んでいる地域に多く回されてる。そのせいか、金持ちの住んでるところでも麻薬取引や売春が行われるようになってる。

ジョージア州にあるサンディ・スプリングス市は、富裕層が作った自治体だ。「貧困層に多く配分されていた税金を取り戻そうという主張」が富裕層だけでなく中間層にも受け入れられ。住民投票では94%が賛成して、2005年に誕生した。住人は、医師・弁護士・会社経営者などで、平均年収は1000万近く。市の去年の収入は、88,347,698ドル(約90億円)

裕福な市の誕生だが、ここから先がまたすごい。警察と消防以外の業務を全部民間企業に委託。同じ規模なら数百人必要な職員を9人にまで減らした。裁判所にいたっては、裁判官が必要な時だけ時給100$で雇うんだって。おかげで運営費が、当初の予想より半分で済む始末。その分は、市民の安全を守る緊急センターに回した。24時間通報を受付で、10秒以内に電話を取ることを義務付けられている。警察も90秒で出動して、早ければ2分で現場に到着する。市民の9割が公共サービスに満足して。噂を聞いた富裕層が、さらに引っ越してくるから人口も増えてる

また、サンディ・スプリングス市の運営ノウハウを学ぶために、全米各地から視察が相次いでいる。そのほとんどが、富裕層だという。この市を手本にした自治体は、ジョージア州で5つ。全米では30あまりの自治体が誕生しようとしている。

サンディ・スプリング市のラスティ・ポール市長の言葉

「自治体は税金を当たり前だと思わないことです。税金に見合うサービスを提供しなければ、市民はすぐ不満を溜め、税金を払わなくなります。公共サービスの質を高めて、市民に税金を払う動機を与え続けるのです」

富裕層がいなくなった自治体

ジョージア州 フルトン郡は、サンディ・スプリングス市設立後、税収が年間40億円あまり減った。郡の中で最も貧しいサウス・フルトン地区では、今年に入り次々と公共サービスが打ち切りになった。ゴミ収集車がめったに来なくなったり、図書館の開館時間が2時間以上短くなったり。理由は予算の削減。フルトン郡の一般会計は歳入が減り続け、2年前から歳入を歳出を上回った。他にも、公園の予算が削られ、高齢者センターの食事が一部値上げされ。極めつけは、公立病院の予算も2500万ドル(26億円)削減されることになった。

フルトン郡のビル・エドワーズ議員の言葉

「郡の税収が少なくなれば、当然その範囲で、やりくりしなければなりません。やむを得ずサービスをカットしているのです。私は、フルトン郡の住民が状況を理解することを望んでいます。さもなければ、フルトン郡の財政は破綻してしまいます。これだけは、なんとしても防がなくてはなりません」

番組の感想

アメリカの金持ちと言えば、Facebookのマーク・ザッカーバーグ氏、MicroSoftのビル・ゲイツ氏、バークシャー・ハサウェイのウォーレン・バフェット氏みたいに、多額の寄付をしてる人がいるけれど。実は、こういう人たちは少数派なのかもしれん。この番組での富裕層の声をまとめると、「所得の再分配なんかくそくらえ!」「金持ちが払った税金を貧乏人の為に使うな!」って感じ。

この番組の富裕層はミリオネアだからな。おそらく、ここで上げた多額の寄付をしてるのはビリオネアだろうから、レベルが違うけど。まあ、資産10億ドル(約1000億円)以上となれば、99%寄付したって左団扇で暮らしてけるからな。それだけ持ってれば、「貧困層から税金を取り戻せ」とか言わないか。けど、金持ちってケチだから金持ちになったって説もあるからな。人間性によるか。

日本だと法制度が違うから、こういう事は起こらないだろうけど。将来的には、富裕層(特にビリオネアクラス)が相続税や所得税などの税金対策で、国外脱出する可能性は高いと思ってる。そうすると日本には海外移住できない中途半端な中間層と、元から国にたかるしかない貧困層が残るわけだ。まあ、言葉の壁とか環境の変化についていけそうもない人もいるだろうし。資金がある人すべてが日本から出るとは思えないが。

ジョージア州のケースとはちょっと違うけど、日本でも公共サービスに不満があって隣接した自治体に移住するケースもある。海外移住まで行かなくても、国内で金持ち優遇税制やったり、高品質な行政サービスを提供するところが出てくれば。今後はそういった勝ち組自治体に、金持ちが移るケースはありそう。水は高いところから低いところに流れるけど。人は条件の悪いところから良いところに移るからな。

千葉県銚子市から茨城県神栖市に住民移動してる例は↓
プロジェクト2030の予測に基づく住宅戦略 -超少子高齢社会への覚悟は決まってるかい?-

貧民には住みにくい世の中になりそうだ。

行政サービス民営化

サンディ・スプリング市について、幸福実現党のあえば直道氏が、2010年に視察して当時のエヴァ・ガランボス市長にインタビューしてる記事を見つけた。

アメリカレポート – サンディ・スプリングス市 -「小さな政府」の成功モデル〔2011年3月25日公開〕

当時の情報だけど、業務委託について次のように書かれてる。

同市の体制は市長1人、議員7人、市職員7人(2010年3月)。それ以外は、すべて民間で運営されています。受託企業は、競争入札によって決定した全米大手ゼネコンの子会社「CH2M HILL OMI社」(以下、OMI社)で、市の運営にあたる140人の社員は、勤務時間外の業務も厭わず、職務に当たっていると聞きました。そして、低コスト、高い品質で迅速なサービスを市民に提供するという、世界でも画期的な運営スタイルを実現しているのです。OMI社は徹底して「サービスの品質」を重要視しています。

「勤務時間外の業務も厭わず、職務に当たっていると聞きました」って、残業代支払われるんだよな。それは置いとくとして。

サンディ・スプリングス市では改革努力もあって、固定資産税をみると、市が課税する分については周辺都市の約半分の税率であり、税金も安く抑えられています。

サービスが良くなったのに税金が安くなるとは。ちなみにこの記事には、クローズアップ現代で強調してた、「富裕層が作った自治体」という記述はまったくない。軽くググってみた結果も同じで、PPP(Public Private Partnership)都市とか、小さな政府の代表例みたいに紹介されるのが大半だった。

この後市長と、市を運営する企業幹部のジョナサン・マンテー氏へのインタビューになるが。市長は、サンディ・スプリングス市の成功は、競争にあると言ってる。

わたしたちのグループは共和党員、及び共和党支持者ですが、長い間、この市をつくろうと努力してきました。
一般企業は自由競争におかれていますが、地方政府は競争がありません。
アメリカを経済成長させてきたのは、競争の原理です。競争の原理がないと、本当の意味での成功はありません。
わたしたちのような新しい市は、新たなシステムですべて自由競争ができます。しかし、既存の市では難しく、例えば、一部の部署を外に委託するなど、部分的にやらないと、既存勢力から大変な抵抗があります。成功のための魔法の方程式は、「競争におく」ということです。自由競争を導入することにより、効率性が上がります。それによって、コストがカットされるのです。

また幹部は、「伝統的な市のサービスを提供していないのです。革新的なイノベーションを行った行政サービスを提供しています」としてる。具体的な記述はないが、技術革新により効率的なサービスを展開するのでスタッフの人数が少なくすみ、最もコストのかかる人件費を抑えることが出来ると。

ちなみに「勤務時間外の業務も厭わず……」に関連する発言も。

自由競争が非常に重要です。そして、「サービスの品質」が非常に重要です。給料が高くても、サービスの品質が信頼され、わたしたちは雇われているのです。
そして、サービスの品質を保つために、我々の社員は週40時間、ITツールや多機能携帯を駆使してフルに働いています。週末も、サービスを提供するために時間外でも仕事をしているのです。

これってサビ残? コールセンターだと24時間年中無休らしいから、2~3交代のローテーション制だろな。結構ハードな職場かも。まあ、給料が高いなら仕方ないか。アメリカの労働法知らないからなんとも言えんが。

今回のまとめ

サンディ・スプリング市の運営方法については、日本でも参考にはなりそうだな。主にコスト削減に関するところは。

人件費に関しては、インタビュー記事の通りだと、効率化で人数を減らして削減するのは以外だった。日本的感覚だと、公務員様から派遣に変更して給料下げてるのかと。日本の地方自治体もこれぐらいやってもいいんじゃないかな。公共施設とかだと管理を民間に丸投げしてたりはするけど。

ちなみにサンディ・スプリングス市の人口は10万弱。日本で一番これに近い都市は、新潟県の三条市。日本とアメリカだし、土地面積も4倍ぐらい三条市が広いので、一概には比べられないが。三条市の平成25年度の職員数は932人。消防部門に151人いるから、これを除けば781人。流石に9人とは比較にならないけど、サンディ・スプリングス市の当初の見積もりだと、必要な職員数は数百人だからな。日本には、大分改善の余地が残ってるな。


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