アニメ制作会社はブラック?
なんか、クローズアップ現代+でアニメ制作会社のブラック労働が取り上げられてたんだけど。これでP.A.Worksも民放通り越してNHKでテレビデビューかと思ったが、富山の会社はスルーされてた。NHKと言えば、ソーシャルリスティングチーム(SoLT)がいて、ネットを四六時中監視してるんだから、当然P.A.Worksの件はつかんでるだろうに。
クロ現+ 2兆円↑アニメ産業 加速する“ブラック労働”
P.A.Worksはいったん置いといてNHKの番組に話を戻して、上記サイトでいくつか気になった点についてなんか書いてみる。
2兆円↑アニメ産業 その陰で…
「駆け出しのアニメーターの平均年収は、110万円」という数字が出てるが、いわゆる低単価の歩合制の請負契約で仕事してる「動画マン」と呼ばれてる人たちのことか。なので、単価が上がる原画マンや、社員になって最低時給など労基法に守られる人は除外されてると思う。一般企業で言い換えると、一部上場企業のパートの平均年収は100万円みたいな数字じゃね。
もっとも、この年収は熾烈な環境を生き残った動画マンの数字で、実際はそれより稼げず辞めた人もいるから実態はもっと低いという指摘もあるから。アニメ制作にかかわる最底辺のやりがい搾取される人が、海外で生産委託してる工場勤務者なみに苦しい暮らしを強いられてることには、変わりないだろうが。
2兆円↑アニメ産業 加速する“ブラック労働”
アニメの売上がテレビ放送だけじゃ稼げなくて、大半が関連作品に依存する「アニメ業界の構造」は、まあ仕方ないんじゃね。だから、「これだけ市場が拡大しているのに、なぜ下請けやフリーの人たちにお金が下りてこないのか?」と言われても、制作費用出してないとこに金が下りてこないのも当然じゃね。
例えば、大型商業施設を建設してる日雇い作業員に将来のテナント収入が分配されないのはおかしいとか言う人はいないと思うけど。まあ、正社員なら会社の業績や本人の出世とかで、間接的に反映されるかもしれんが。そもそも、末端に金払ってる制作会社に金が入らないんじゃどうしようもない。
それを何とかしたいなら、この後出てくるプロダクション・アイジーの石川光久社長の言うとおりじゃね。リスクも取らずにリターンだけ求めるのは都合良すぎかな。
石川さんは、制作会社みずからがリスクを取って二次利用の権利を確保するなど、ビジネスの感覚を持つことが必要だと提言しています。
また、制作現場では昔より絵が緻密になってスキルも時間もかかってるのに、単価が上がらないと嘆いてるが。これもトヨタの下請け業者が、製品に対する上からの要求は厳しくなる一方だけど、値上げどころか値下げを求められるのと同じじゃね。こっちの方は企業努力でどうにか出来るレベルじゃないから、下請法とかの法律で解決しないと無理ゲーじゃね。まあ、自動車業界だと法律あってもすべて解消できてる訳じゃなさそうだが。
それもこれも、「人気のある業界ほど、若く、やる気のある人たちが多く集まってくるがゆえに、やる気を逆手に取って、なかなか働き方改革が進まない」に尽きるのかな。芸能界やディズニーランドみたいに、この待遇でも人が集まってるうちは待遇改善されることはないんじゃね。
脱“ブラック労働” アニメ制作会社の挑戦
で、そんな状況を改善しようというアニメ制作会社が紹介された訳だが。その一つ「ポリゴン・ピクチュアズ」は、最新技術によるオールCG化と、進捗管理の徹底で効率化を図ってコストを削減したらしいが。個人的には、Webの「ほぼすべてを手書きではなくCGで制作」というよりは「3DCGの有効活用」とか言い換えた方がしっくりくると思う。
番組見た限りでは、キャラクターや背景を3Dモデリングからおこして社内で作成してるみたいだな。キャラクターの動きはモーションキャプチャ使用してるから、リアルで複雑な動きでも簡単に再現できる。どっちも、最初の導入に手間暇金はかかるだろうが、いっぺんシステムとノウハウ作れば後で応用効くし、長期的に見れば賢い選択かもしれんな。
ちなみに、モーションキャプチャってのはこんなの。多分、アイマスとかプリパラのダンスシーンも、動きはこうして付けてると思う。
もう一社の「サイエンスSARU」は、2Dアニメの制作ソフト使って、一枚一枚絵を描くような面倒くさいことはせず、大雑把に言うと絵を変形させることでアニメーションするみたいだった。個人的には、動きは面白いが魅力は感じないアニメっぽく見えたが。
余談だが、この2社のアニメってサイエンスSARUの「ピンポン THE ANIMATION」以外、ほとんど見てない気がする。ピンポンに関しては、原作のマンガは好きだけど、アニメは蛇足的要素が多すぎて正直好きになれなかった。それは別として、作画とかのみに評価を絞っても、「うわっ何これ?」って記憶しかない。
ちなみに、サイエンスSARU使用ソフトってFlashらしい。
仕事内容
Adobe Flash(現:Animate CC)を使ってのアニメーション制作業務
ピンポンアニメの作画も好きになれない理由が一つ分かった気がする。
今回の感想
クロ現+のアニメブラック労働特集はP.A.Worksが出てなくて拍子抜けしたが。現代版蟹工船とも揶揄される動画マンの待遇や、労働基準監督署とかの動きを伝えただけでもそこそこ意味あるんじゃね。
余談だが、小林多喜二氏もテロ対策特別措置法じゃなく治安維持法とかで起訴されたりしなければ、特高にマークされて拷問のうちに亡くなって、こんなに早く青空文庫に収録されることもなかったかもしれんな。
ハンドシェイカー
どうでもいい話ついでに、番組で紹介された3DCGがらみで、「ハンドシェイカー」というアニメを思い出したんだけど。これ多分、オール3DCGで制作されたアニメだと思うんだけど、最初見た時、キャラの動きがものすごく気持ち悪かった。2話目で慣れたけど。多分、この手のアニメが当たり前に放送されるようになれば、普通に見れるようになる気がする。将来的に、動画マンの人海戦術で数千枚の絵を描くより、3Dアニメーションをレンダリングした方が早い・うまい・安いとなれば、一気に3Dアニメに置き換わるかもしれんな。
さらに余談だが、このアニメ最初の方に出てきた鎖女がエロ担の割にすごいいい演技してると思ったら、日笠陽子氏だった。けど、こっちの仕事もこの先初音ミクとかにリプレースされるんだろうか。
P.A.Works KUROBAKOからSHIROBAKO転身?
それはともかく、アニメ制作会社のブラック労働に話を戻すと。とりあえず、P.A.Worksは富山の会社だから、面倒くさくて取材に行かなかったのかなと思ってたけど。P.A.WorksもKUROBAKO批判が堪えたのか、雇用体系を若者のやりがい搾取の労基法適用外の請負契約での嘱託扱いから、将来的には直接雇用に変えようとしてるらしい。だったら日経系メディアでよくある、かつてのブラック企業がホワイトに転身みたいな感じで取り上げてもらえばよかったのに。それじゃあ、番組的に盛り上がらないか。
で、社員採用制度の前に、期間1年の「プロアニメーター養成塾」からはじめるのか。これって、ワナビー商法で使えない奴から受講料巻き上げつつ、千尋の谷から這い上がってきた人は訓練された動画予備軍として契約社員(正社員は「経験年数・実績等による正社員登用制度」)で採用する気満々に見えるんだけど。
その後はおそらく、最初の2ヶ月は試用期間で社会保険なし。虎の穴もとい「プロアニメーター養成塾」の生き残りなら、試用期間中に月間動画500枚描いて当然だろって事で、暗黙のノルマ達成できなければ肩たたきかな。
そう考えると、アニメ制作会社も番組に出てた会社やIronSugar先生みたいな効率至上主義で、最新のソフトや機材使って3D化や作業のマニュアル化を推進した方がいいかもしれんな。P.A.Worksみたいに人件費ケチって新社屋に金かけてそうなとこだと、設備投資にまで回せるかは不明だが。まあ、あれは自治体から補助金もらってる噂とかもあるから、そんなに大変じゃないのかもしれんし。日本ユニセフ協会のユニセフハウスみたいに、金集めるには立派な箱物が必要って事もあるだろうし。
P.A.Works求人情報Q&A改変!
ついでになんとなく、P.A.Worksの求人情報のQ&Aを見てたら、なんか違和感感じたんだけど。どうも、昔書いてあった偽装請負疑惑を持たれてた「嘱託契約」の「出来高制」とか、都合の悪そうな真実を大幅削減してるんだけど。これやっぱ、「来年度以降のアニメーター育成および採用に関する新制度開始」にあたっての印象操作なんだろうか。
会社案内 – ABOUT US | 株式会社ピーエーワークス 公式サイト – P.A.WORKS Co.,Ltd. Web Site
以前のQ&Aから項目ごと削除されたのは、原画マンに上がれなければ社員になれず、直接雇用でも労基法も適用されない出来高制の「雇用形態について」、本来なら昼食補助や割安な寮といったプラス面のはずだが最低賃金以下の研修費があるため削除されたと思われる「各種手当について」、ここは問題なさそうだが最後の年齢制限25歳がヤバいと感じたのか「採用試験について」あたり。
その他にも気づいたとこだと、「アニメーターの仕事ってどんなもの?」で「動画1枚に何分かけられるのですか?」みたいなのが削除されてる。多分、P.A.Works原画マンのノルマ、月500枚がNGワードだったんだろうな。あとは、「生活環境について」の寮関係の記述が削除されてる。
「仕事内容について」では、研修に関する内容がないようだ。おそらく、今後は養成塾上がりを即戦力にするため、今まで研修で教えてきたことは養成期間中に覚えさせる腹じゃね。ただ、「アニメーターの一日の流れ」とか参考になりそうなとこまで削除してるなあ。それに、厳しい内情をさらしてまで、「生活していけますか?」という質問に真摯に答えてたのに、これも消しちゃったのか。
「会社について」では、将来を見こまれたぽっけ氏があと一ヶ月心が折れなければ受けれたであろう、あの「原画試験」とかがあぼーんされてる。原画試験については、生涯で試験を受けられるのが最大3回とか、回数制限超えたらぽっけ氏によって一躍知られるようになった「机代」を払わされるなど、一般企業ならパソナルーム扱いされることが暗喩されてたQ&Aがなかったことになってるな。とどめに、P.A.Worksは業界水準からすれば恵まれてます(キリッ)ってのも消しちゃったって事は、自らブラックだと認めたと捉えていいんだろうか。
最後に、「アニメーション業界について」でも「動画のプロはいますか?」が抜けてるのに気づいた。なんでだろうと思ったら、出来高制だと優秀な動画マンでも人並みの収入を得るのは厳しいってのが禁則事項なのかな。P.A.Worksも、労働契約見直すついでにこのQ&Aにも手を入れたんだろうが、この歯抜けQ&Aを見るだけでもかなりの苦労がうかがわれる。
とはいえ、P.A.Worksの根底にあるであろう、「食べられないという理由以外に、すぐ辞める人の傾向は」に対する回答の、「『自分の時間』が欲しい人です」うんぬんが消えてないのは、P.A.Worksなりにゆずれない願いなんだろう。昨今の売り手市場の就職戦線にあっても、給料より休みとか福利厚生とか自分の時間がどうたら言ってるような、ゆとり教育まがいの腐った根性してるような奴はいらないという意思表示かもね。
もっとも、そこまで戦力外の猫の手はいらない子扱いするなら、過去のQ&Aもサイレント改変じゃなく、変更前のも残しとけばいいのに。まあ、あんまりハードル上げちゃうと、将来の仕事仲間予備軍以外の、プロアニメーター養成塾のお客さんが来なくなっちゃうんだな。なんか納得。
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