保険のプロ
世の中には、『「保険不要論者」の書いたものを読むと何とも情けない気持ちになります』という人がいるらしい。
この記事によると、保険不要論者は『保険は内容がよくわからないから、加入するのはよそう」といっている記事と「保険は結局、払い損になるので、安全確実な貯金にしましょう」といっている記事に二分されているように感じる』らしいが。
私もどちらかというと、保険無用論者に近いと思うが。それは、会社の社会保険に入っていて十分な貯金があるという条件つきだが。だいたい保険はいらないって言ってる人は、こういう見解が多いと思うけど。まあ、この記事に合わせて思ったことを書いて見る。
なぜ保険は難しいのか?
まず保険が難しいことについては、その通りと認めてるが。それゆえ、現役の保険のプロに聞くことを推奨してる。
生保プロ・損保プロの立場から申し上げますと、正直「保険という商品はこの世で一番難解な商品の一つ」であると思います。ですので、一般の方々が分からないのは当然かもしれません。
一方、ライフネット生命の代表取締役社長兼COOの岩瀬大輔氏は、副社長時代の著書「生命保険のカラクリ」で「約款が複雑すぎて読めない、理解できない、ということであれば、その保険には加入を思いとどまった方がいいのかもしれない」と書いている。
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もっとも、本の執筆時はまだ保険代理店と契約してないから、分かりやすい保険ならインターネットの直販だけでいけると思っていたからかもしれないが。そんなライフネット生命も、現在では対面での相談窓口も設けている。シンプルな保険を目指していてもこの有様だから、難解じゃない保険商品の開発は難しそうだな。
生命保険に関する目から鱗のQ&A
払い損になるという点については、そういう商品もあるけどそうじゃないのもあるという主張。
それと、「結局、払い損になる」という主張については、わざわざその商品群のなかで商品性の悪い(または最新の保険ではない)どこかの商品を揚げて、記事にしているように私には見えます。
Q&A方式で払い損にならない商品の例を上げてるが。
問:支払った金額が倍になる保険って今でもあるの?
答:あります
仮に31歳男性が個人年金保険(無選択式・5年毎利差配当付・年金年額150万・10年確定年金・払済み設計)に加入したとします。払込保険料の合計は2,990,977円、75歳から受け取る10年確定年金の合計額は5,833,000円となり、リターンは195.02%となります。保険料支払中は個人年金保険税制適格特約を付けていれば、生命保険料控除により所得税や住民税が軽減されます。
これって、長期間保険を払い続けて長生きするという条件だよな。しかも「75歳から受け取る」って条件は庶民じゃありえない。個人年金保険の主な目的って、公的年金貰うまでのつなぎかと思っていたから。そういった意味では、確かに目から鱗だな。
それと、生命保険料控除は個人年金保険に限ったことじゃないし。全額控除の対象になるのは2万円以下で、8万円超は一律4万円。しかも、若いうちから加入しないと、保険料が控除の適用限度額超えるぐらい高くなる。
現行の制度だと、新生命保険料・介護医療保険料・新個人年金保険料と別々に控除されるので。高所得者なら3種類コンプするのも悪くないと思うが。個人年金も20代なら年2万以内(月1666円)から始められれば、貧民にも勧められるんだが。
問:ただで加入できる保険ありますか?
答:あります
保険料は払う必要ありますが、払った保険料全額かそれ以上が、ある時期に戻る保険があります。
一般的に、それは「ただで加入できる保険」とは言わないと思う。実質保険料がかからないとか、後から戻ってくると書くべき。
それに、ここで紹介してる「一時払い終身医療保険」は、保険料を一括で支払うのでかなり高額になる。商品紹介とか見てると、相続税対策とか富裕層シニアがメインターゲットぽい。まあ、一時払いできるだけの資金力がある人なら、インフレリスクを考えなければ悪くないんじゃない。
保険不要論者なら、医療は掛け捨ての安い保険にして、貯蓄部分は自分で運用した方がいいと指摘するだろうが。運用がうまくいくならその方がいいけど、損失だすぐらいなら保険の方がマシかもね。いざと言う時の保障もあるし。
問:ただで保障が続く保険ありますか?
答:あります
「保険料払込免除特則」というものが付加できる、または主契約に自動セットされている保険がそうです。例えば、この6月に販売停止になったがん保険ですが、強力な保険料払込免除特則がついており、それが人気の一つでもありました。
「ただで保障が続く」までは金払ってるんだけど。それに、保険かけてすぐに病気になるって条件つき。なんだか、都合のいいことばかりでかい文字で書いてあるけど、不利な条件は最後の方に小さい文字で書いてある広告を思い出す。
問:当選確率の高い保険、低い保険は何ですか?
答:例えば当選確実の保険(つまり、保険金給付条件に当たる可能性が確実な保険)としては、終身死亡保険、個人年金保険、養老保険(学資保険含む)が、それにあたります。
当選確率って何かと思えば、支払った保険料の元が取れるかって事でいいのか。貯蓄性の高い保険なら、統計的には額面上の元は取れるだろう。物価上昇時は実質的に目減りするので、そこは定期預金とあんまり変わらないけど。生命保険の死亡保障に関しての記述は妥当だと思う。確立は低いけど、万が一に備えたいってのが保険の役割だろうし。
問:ただで貰える保険ありますか?
答:あります
例えば、保険の場合、被保険者は人間でなければなりませんが、契約者は人間でなくても構わない保険があります。つまり、「法人」が契約者の保険であり、この分野は業界では「法人保険」として、個人が契約者になる「個人保険」と分けて考えています。法人は、社長や役員の退職金準備や利益の繰り延べ、税の軽減含めた税金対策等でも、生命保険を幅広く活用しています。
これが該当する一般庶民って少数派じゃね。
問:保険にも開発上のミスってあるの?
答:あります
めったにない例ですが、やはり人間がつくるもの、ミスがある場合があります。
ただの自慢話。
問:病気や怪我で障害を負って働けなくなったり、死んでしまったり、逆に長生きしてしまっても、保険金が給付される無選択の保険ってあるの?
答:あります
国民年金保険です。国の制度ですが基本的にこれは生命保険の一種です。
オチが国民年金かい。
富裕層向けの記事
「保険のいらない人」は自分でリスクを処理できる大富豪で、「一般庶民は違います」と書いているが。この一般庶民とやらは中の上から上の下ぐらいまでで、子供がいてサラリーマンの平均年収程度は対象にしてないように思える。もしくは、一般庶民なら保険は必要だから、家計を圧迫してでも払うべきと考えてるか。
記事を書いてる人のプロフィールが分からないので、憶測になるが。おそらく、保険見直し本舗みたいな、生命保険の取次ぎをして手数料収入を得ているのではないだろうか。それゆえ、契約してる保険会社が取り扱っていて、手数料の取り分が多い保険料の高い商品の紹介が多いんじゃないかと推測する。
なぜ保険相談は無料なんですか?
保険会社からの販売代理手数料で運営されています保険見直し本舗は、50社の保険会社と提携しており、その保険会社からの販売代理手数料で運営されています。ご相談の結果、保険契約をしていただけるお客様が多いため、無料で保険見直し本舗の各種サービスをご利用いただくことができるのです。
また、ご相談の結果、お客様の加入されている保険を見直さずに、そのまま続けたほうがいいということもございます。このような場合でも、相談料は一切いただいておりません。
「保険会社は儲かりすぎ」は正しいか?
また、保険会社が儲かってようが、社員の給料が高くてもいいじゃないかとも書いてるが。
それとたまに、「保険会社は儲かりすぎだ」、「社員の給料は高すぎだ」という記事も見受けます。これも消費者がその商品を支持している裏返しです。「営業マンが消費者を騙したからだ」と書いてある記事もありますが、今のところ日本の保険会社で消費者を騙して保険加入させている会社はないでしょうし、保険業法や保険法に則って保険募集や保険仲買している限り、契約者や被保険者を騙して契約させることは不可能です。契約者や被保険者の同意なくして契約は成立しません。
保険会社が儲かっていようが、社員の給料がいくらであろうが、その商品やサービスが支払コストに見合うものであるならば、消費者は買うでしょうし、そうでなければその会社が消費者の支持を得られなかったため潰れるだけのことです。それを契約当事者でもない、業界プロでもない評論家がとやかく言う筋合いではありません。
私も以前に「保険会社が儲かってるのを考えれば保険料は払いすぎてる人が多いんじゃね」なんて記事を書いたが。まあ、お金預かってる会社があんまり低収入だと、かえって心配ではあるかな。それに経営破たんするぐらいなら、名画を買いあさったり、テレビCMをバンバン流す方が安心できるかもね。
個人的には、剰余金が出たら割戻金として返還する共済系の商品みたいに。利用者へ還元してくれるサービスを選ぶけど。
保険料の内訳
ちなみに、保険に払う保険料は全額が契約者の為に使われてるわけじゃない。保険会社も、慈善事業で商売やってるわけじゃないんだから当たり前だが。もっとも、保険料の内訳を公開してるところは、私の知る限りライフネット生命ぐらいだが。
ライフネット生命では、手数料にあたる付加保険料を低く抑えてるから保険料が安いと謳ってるが。それでも、例に出してるケースでは24%から38%を占めている。これが低コストなのかは、他社の内訳を見てみないと判断できないが。ちなみに、代理店への手数料は月額7.5%らしい。
そういえば、「生命保険のカラクリ」で「私たちはネットを通じた直販モデルにすることで、保険料は大手生保の半額にできると考えている」と書いてたが。そこまで安くはなってないと思うけど。大手生保が値下げしてるのか、それともネット生保が対面とか大手みたいな事をやるようになってるからなのか。
保険のプロとの付き合い方
保険は、人によって許容できるリスクや支払能力が違うし、求める保証内容も人それぞれなので、どれが最適かは条件を決めないとなんとも言えない。まあこの記事がもっとも言いたいところは、個人個人にあった保険が知りたければ、保険のプロに聞け。プロなら生半可な知識でWebに書いてる素人には思いもつかないような商品を紹介するぜ、という事なんだろう。
そんな訳で、保険の加入を検討してる人は、一度無料相談サービスを受けてみるのもいいんじゃないか。一通り話を聞いた後で、この記事に出てる商品について聞いてみるのもよし。それでプランを提案されてもその場で決めず、家に帰ってからネットで保険代理店が取り扱ってない会社や、全労済とか都民・県民共済の保険を調べてみる。代理店のよりいいと思うのがあれば、次に来店した時にどっちがいいか相談して決めるとか。
まあ、リアル店舗で実物商品見て、ネットで最安値調べて購入するみたいで気が引けるかもしれないが。保険のプロが素人がネットで調べた程度の保険以下の商品しか提供できないなら、それは仕方あるまい。
個人的な貧民お勧めの保険
今回の記事で貧民に参考になるのは、国民年金についてぐらいだな。出来ればこの記事の執筆者には、リーマンの平均年収以下の低所得者向けの保険についても言及して欲しいが。無理だろうな。
個人的には一般庶民なら、結婚して子供がいるなら万が一の事を考えて生命保険か、同様の保障を考えるべきだと思うが。低所得者が無理してまで払うものでもないと思う。会社の社会保険に入ってるなら、医療保険は全労済とかの掛け金が全額控除対象になるぐらい安いのを。生命保険は掛け捨てで保険料が低いのを、子供の成長を考えて20年ぐらいかければいいんじゃない。
住宅購入するなら、団信(団体信用生命保険)には当然入るだろから。購入後に旦那が亡くなっても、家のローンは保険で支払われるから。家賃の負担がなければ遺族年金もあるので、子供が高校卒業するぐらいはなんとかなるんじゃない。まあ、私立に進むとか大学進学となると、ある程度稼ぐが学費分の生命保険も必要かもしれんが。
独り身なら生命保険は不要だから、それこそ全労済のこくみん共済医療タイプで十分だろ。本来は、若いうちはあまり病気しないから、医療保険は無駄になることが多いんだけど。それでも大病を患ったりすると、将来持病がある人向きとかの保険料の高いのしか入れなくなることもあるので。社会人になったら、健康なうちに医療保険に入るのは悪くない。月1600円なら、全額控除の対象になるし。
こくみん共済医療タイプにも、60歳で契約満了した後に「医療60歳移行タイプ」に移行すると、保障が半分以下になるという欠点はあるけど。貧乏人が生きてるかどうかも分からない60歳以上になってからの為に、終身型の割高な保険料を何十年も払うのが得策とは思えない。その年で医療費が払えなくなったら、もう生活保護にかけこんでもいいんじゃね。ぶっちゃけ、身の程を知るべき。
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