26年でダメになる家と資産になる家の違いとは!? [単行本] 笹川 晋也 (著)を読んだ。2008年に出版された「26年でダメになる家に35年ローンを組むのはやめなさい。―間違いだらけの日本型家づくり」に加筆・修正して2011年に新書版として刊行された本。
内容をざっくり説明すると、在来工法で作った従来の日本の木造住宅なんて26年もたてば建て直しが必要で資産価値0だぜ。だったら建築費多少高くなってもSE構法で建てようぜって感じ。SE構法の詳しい仕組みは本書で確認してもらうとして、大雑把に書くと木造3階建ても建てられるように構造計算した耐震設計。長期優良住宅に対応。建物等級がA等級構造なので火災保険も安い。
SE構法マンセー
なんで日本の木造住宅が26年も持たないのか。一つは構造的問題。構造計算もされず、理論的裏づけのない建築基準で建てられているから。
もう一つは機能的問題。新築の間取りでも年月がたつと機能的に寿命がくる。例えば、今時室内に洗濯機置き場なし、脱衣場なしとか、冷蔵庫など最新の大型家電を置く場所がない物件はあり得ない。これは建築方法に依存しないけど。SE構法は構造計算を骨組みのみでも十分なように設計している為、リフォーム時にワンフロアにしたり吹き抜け作ろうが自由自在。生活様式の変化にも対応できる。
で、実際に26年じゃなく70年持つ家を建てた場合はどうなるの。著者の希望的楽観に基づくシミュレーションでこう書いている。
親から「税金だけ払えよ」ということで家をもらうことになった。しかも、その家の資産価値を調べてみたら、なんと3000万円! これはうれしいですよね。
そしてまた25年の間にいろいろと手を入れて価値の維持管理・修理して、また子どもに譲る。そのときにはさらに1000万円も価値が上がって4000万円になっている!
欧米ではこういうことが行われているから日本でも夢物語じゃない、と主張してる。著者は建築会社の代表取締役で住宅事情には私より詳しいはずなので、こちらの考えは間違ってるかもしれない。それを前提で書くが、欧米で価値が上がった時の土地の価格は同じなのか? 井形慶子の受け売りになるが、イギリスだと新築で建てるのに厳しい規制があるらしい。そういう法律の有無は? 少なくとも日本で土地の値段を考えない建物だけの価格だとしたら、維持管理・修理した中古が新築時より価値が上がるとは思えない。上がるとしたらリフォームや増築とかした場合ぐらいじゃね。
住宅ローンってお得だよ
そんなわけでSE構法で資産になる家建てるんなら、26年でダメになる在来木造よりお金がかかるのはしょうがないよね。でも住宅ローンをうまく利用すれば大丈夫、などと銀行の回し者みたいなことも書かれてる。要約するとこんな感じ。
低金利時代だから頭金なんかためずにとっとと買っちまえ。10年ローンとか繰上げ返済なんか必要ねえ。35年ローン組め。団体信用生命保険に契約してれば生命保険入ってるのと同じだから気にせずローン払い続けろ。団信ならローン途中で旦那が死んでも保険で残額全部支払われるので、借金なしで持ち家が残るから家族も安心。キャッシュで買えてもローン組め。保険以外にも住宅ローン控除で税金返ってくる。
本書の例では、賃貸で家賃8万と2000万~3000万の生命保険を払う場合と、住宅購入時の団信と1000万程度生命保険に加入した時の保険料の差額を貯金すればいいとしてる。確かに生命保険は掛け金高いから、それも有効なのかもしれん。さらに、金利を考えれば早く返した方が得だけど、保証を考えるとゆっくり返した方が特になるって考え方もあるという記述が。
長期優良住宅に対応した50年ローンを組んで月々の負担を減らして差額を貯金する。長く借りても返済が終われば貯金がある方が良くね?って、どう考えても50年と35年ローンの支払い総額の差額の方が貯金金額より多いだろう。しかし、これは全額払いきった場合。35年の住宅ローンでもきっちり返す人はそんなにいないんだって。50年ローンだと男なら30歳で買っても返済終了は平均寿命超えてるし。団信かけるならそういう考え方もありかもね。
これから家を建てる人に
実際にSE構法で建てた後のメンテナンスはやりやすいか? 維持管理コストは在来より安く済むのか? それ以前に耐震設計が机上の理論でなく現実にも効果があるのか? など気になることはある。SE構法がベストなのかはまだ判断付かないが、選択肢の一つとしてはあるかと。
とはいえ、今のご時世住宅に3000万だせるとなると、ぽんとキャッシュで出せる富裕層か公務員みたいに定年まで働けるか退職金でローン返せる安定した職業ぐらいだよな。というわけで予算3000万ぐらいで新築住宅建てようと思ってる人なら読んでおいて損はない。特に家族持ちのご主人で、自分が死んだ場合の嫁・子どもの将来を心配してるなら。
なお、結婚できない貧乏人と住宅購入を急がない人なら、無理せずに買える金額でない戸建に手を出すべきではない。「磯野家のマイホーム戦略」を読んで10~20年後に備えておけ。
「磯野家のマイホーム戦略」の感想はこっち。
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